精神疾患について障害年金が認められる基準

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 白方太郎

最終更新日:2023年06月12日

1 精神疾患の方も障害年金が受給できます

 障害年金の法律上の受給要件は、主に障害が残存していることと保険料の納付要件を満たすことという2点です。

 障害が残存しているかどうかは、国が定める等級基準を満たすかどうかによりきまりますが、その等級基準において、精神疾患についても定められています。

 等級は1級・2級とありますが、いずれにおいても、「精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの」とされています。

 前各号とは身体障害に関するものであり、大まかに言えば、1級は「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」、2級は、「日常生活に著しい制限を受けるもの」ということになります。

 精神疾患により、これらの常況にある方は障害年金が受給できる可能性があります。

2 精神障害についてはガイドラインが制定され整備されてきています

 以前は精神障害の認定については基準があいまいであり、地域によって認定の違いがあり不平等が生じていることが指摘されてきました。

 しかし、こうした地域間格差をなくすべく、厚生労働省において専門家検討会が設置され、精神障害の認定について基準をより詳細にするためのガイドライン(精神ガイドライン)が策定され2016年9月から施行されています。

 精神ガイドラインでは、①現在の病状または状態像、②療養状況、③生活環境、④就労状況、⑤その他の項目として、具体的な項目を示し、各項目に点数を付して、その総合判断により障害認定を行うことを定めています。

 同ガイドラインでは、上記①~⑤の各項目についてさらに細かい考慮要素を示していて、そうした要素毎の点数の総合考慮によって、障害年金1級、2級の認定を行うことが定められています。

3 支給対象となる精神疾患

 精神疾患で障害年金を申請する例としては、うつ病、双極性障害、統合失調症、知的障害等が多くなっています。

 また、てんかんも精神疾患として障害年金を申請することができます。

 適応障害等のいわゆる神経症の分類に属する精神疾患については、原則として障害年金の認定対象となりませんが、症状が精神病の病態を示している場合には認定対象となります。

4 精神疾患で申請する際のポイント

 精神疾患の症状は見た目では分からないため、精神疾患で障害年金を申請する場合には、日常生活や仕事をする上でどのような困難があるかを具体的に医師に伝え、診断書に反映してもらうことが重要です。

 特に仕事をしている場合には、1日の勤務時間や仕事の内容、勤務先にどのような配慮をしてもらっているか、障害者雇用か等を伝えることも必要です。

 また、精神疾患の方は転院を繰り返している人も多いため、通院歴を思い出して整理することも必要になります。

5 障害等級を取り消された場合にも異議申し立てができます

 精神障害による障害年金については、最初の認定時に数年ごとに更新する定めが付されることが多く、認定後に就労しはじめた場合などにおいて、更新時に障害年金の支給停止の決定がなされることもあります。

 しかし、この支給停止についても、その決定に合理性があるか、上記の精神ガイドラインに則っていない場合には、異議申し立てをして争うことができます。

6 精神障害による障害年金の申請等でお悩みの方は専門家に相談しましょう

 精神障害は身体障害と比較すると目に見えないものであり、判断が難しい障害です。

障害年金の認定が受けられるかどうか、その判断は非常に難しいです。

 しかし、精神障害については国もガイドラインを定めるなどして積極的に取り組んでおり、精神障害による障害年金を受給できる可能性は十分あります。

 受給できるかどうか、また、申請するにはどうすれば良いかお悩みの方は、ぜひ一度、専門家にご相談ください。

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